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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年6月11日 党中央委員会第8期第5回全員会議拡大会議が閉幕

 

 本日の「労働新聞」は、6月8日から10日までの3日間開催された標記会議の概況を報じる記事を掲載した。

 同会議の最大の特徴は、第1議題として「組織問題」をとり上げ、党、内閣、軍にわたる大規模な高官級人事を実施したことである。「組織問題」は議題の最後に置かれるのが通例であり、開幕当初の報道で会議内容が具体的に報じられなかったのも、これと関係すると考えられる。一般報道では、崔善姫の外相就任に注目が集まっているが、それよりも権力中枢に近い党中央委秘書・部長、軍治安機関トップなどで相当規模の入れ替えが行われており、その意味、背景などについて、十分な検討が必要であろう。

 同会議の開催決定時から主な議題として予定されていた本年上半期の総括と今後の対策については、第2議題としてとりあげられ、金徳訓総理と党中央委農業部長の報告に続いて、金正恩が「結論」を述べ、上半期成果についてコロナ防疫も含めて基本的に肯定的な評価を示した上で、下半期に向けた分野ごとの課題を示した。そこでは、経済関係で農業、軽工業及び建設部門重視の姿勢が示されるとともに、対外関係で「我が党の強対強、全面勝負の闘争原則」を再確認し「国防力強化」の加速を督励するとともに、対韓関係を「対敵闘争」と位置付けるなど、強硬姿勢を印象付けた。ただ、注目の核・ミサイルについての具体的言及はなかった。

 また、喫緊の課題であるコロナ防疫活動については、第3議題としてとりあげ、金正恩が自ら報告を行って、その意義・重要性を強調した上で各種の取り組み強化を呼びかけた。

 会議では、以上の第2、第3議題に関し9つの分科別に研究・協議会を開催した上で、決定書を採択した。

 このほか、第4議題として「党規約と党規約解説集の一部内容を修正補充」することが取り上げられたが、改正が規約に及ぶのかその解説にとどまるのかも含め、具体的内容は公表されず、不詳である。

 今次会議に関しては、概して言うと、これまでに繰り返されてきた主張・報道などの延長線上において、それらを再確認し、その徹底を図るためのものであったと結論づけることができよう。ただ、人事異動の対象者の個別の傾向など子細に観察すれば、何らかの新たな方向性をうかがうことができるかもしれないので、その可能性は留保しつつ、今後検討を深めたいと思う。