rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年11月7日 米韓合同空中訓練への「対応軍事作戦」実施を報道

 

 本日の「労働新聞」は、「米国南朝鮮合同空中訓練『ビジレントストーム』に対応した朝鮮人民軍の軍事作戦実施に関する総参謀部報道」を多数の写真と共に掲載した。

 同「報道」は、冒頭で、米韓の「ビジレントストーム」演習について「地域の緊張を意図的に高潮させる公然たる挑発行為」「我が国家を直接的な目標として狙う侵略的性格が極めて濃厚な危険な戦争演習」などと非難した上で、「(そうした)厳重な状況に対処し、固い対応意志と共和国武力の軍事的能力に対するはっきりとした自信感を示威し、我が将兵の断固たる報復意志に必勝の信念を加えるため」、11月2日から5日まで、「対応軍事作戦を断行した」として、1日目から4日目にかけての作戦内容を日ごとに明らかにしている(その詳細は別途紹介予定)。

 その上で、「対応軍事作戦」の実施結果について、「計画された目的を成果的に達成」し、「敵の連合空中訓練に徹底して対応し、敵空軍の「優勢論」を盲目させることのできる自信感を高め、我が軍隊の確信性ある軍事対応態勢と能力を完璧に確認し、徹底的な対応意志をより確実に固めた」と主張している。

 更に、こうした「対応軍事作戦」は、「敵の挑発的な軍事的妄動が粘り強く続くほど、我々の対応もより徹底し、より無慈悲になるという我々の明白な回答」であり、「これは、すなわち今後も揺らぐことのない我が武力の行動原則、行動方向となる」として、強い対抗姿勢を誇示している。

 この「報道」を読んで何よりも感じるのは、こうした「対応軍事作戦」の実施が、米韓に対する対抗姿勢の誇示であると同時に、あるいはそれ以上に、北朝鮮国内、とりわけ軍内部に向けた「自信感」の維持確保という狙いが込められていたということである。それを端的に示すのが「敵空軍の『優勢論』」という表現で、そうした考え方が人民軍内部に存在したことを示唆するものと考えられる。「盲目させることのできる」(맹목시킬수 있는)という言葉の意味は判然としないが、要するに否定できるという趣旨であろう。

 こうした「報道」を読むと、「ビジレントストーム」訓練中の北朝鮮の苛烈とも感じられた軍事活動が、北朝鮮軍内部の同訓練に対する脅威感(換言すると自軍に対する無力感)が、それだけのことをしないと収まらない(「対応意志」が挫けてしまう)ほどのものであったということを物語っているように思われる。

 なお、今後の動向については、「敵のあらゆる反共和国戦争演習に対して持続的で圧倒的な実戦的軍事措置で対応」すると明言している。ここで注目されるのは、「持続的」との表現が、終了した「ビジレントストーム」などへの対応措置を今後も継続していくという趣旨であるのかという点である。そうであるとすると、今後ともいつ何を仕掛けてくるか気が抜けないということになる。いわんや、米韓側で追加的な動きがあれば、それには「圧倒的」な対応があるであろうから、当分の間、一触即発の状況が継続されることは間違いないであろう。