rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年1月11日 評論「党中央委員会第8期第6回全員会議が提示した人民経済発展12個重要高地を無条件で占領しよう」

 

 標記評論は、本日の「労働新聞」第1面に掲載され、金正恩が先の党中央委全員会議での「報告」の中で、本年の経済分野での基本課題として提示したとされる「12個重要高地」の目標達成を訴えるものである。

 主な論点としては、まず、それへの取り組みに際し、「何よりも重要経済指標の生産計画を月別、分期別に正確に遂行する」ことを求めている。とりわけ、「12個重要高地占領の旗手になるべき人は、人民経済の中枢となる基幹工業部門の幹部と労働階級である」として、基幹工業部門における日々の生産目標の着実な達成を呼びかけている。

 次に、「12個重要高地占領のための闘争は、生産土台の整備補強事業と分けて考えることはできない」、「今年の計画遂行を生産工程の整備補強と有機的に関連させて実質的に推進し、自己の単位の生産を顕著な成長段階に昇り立たさなければならない」として、生産能力自体を増大させることを訴えている。

 最後に、「12個重要高地は、科学技術を先行させ、自体の人材力量に徹底して依拠してこそ成果的に占領できる」、「人材と科学技術をしっかりと取り扱うところに経済事業で確実な成果を収めることのできる秘訣がある」と主張して、科学技術の重視、とりわけ、各単位での科学技術人材の養成に取り組むことを訴えている。

 以上の論旨は、金正恩の「報告」を敷衍したもので、従前の主張と軌を一にしており何ら新味はないが、そこで着目すべきは、各「高地」の実際の目標数値はもとより、「12個重要高地」が具体的に何を指すのかさえまったく示されていないことである。

 それについては、他の報道でも同様であるが、ただ、韓国報道では、1月5日に実施された「党中央委第8期第6回全員会議の決定を徹底して貫徹するための平壌市決起大会」の状況を映した朝鮮中央テレビの番組の中で、同大会会場の電光掲示版に「12個重要高地」として、1番目から順に、「穀物」、「電力」、「石炭」、「圧延鋼材」、「非鉄金属」、「窒素肥料」、「セメント」、「丸太」、「織物」、「水産物」、「住宅」、「鉄道貨物輸送」が表示されたと報じている(このうち、「2 電力」と「7 セメント」は、通常のニュース番組でも写っていた)。

 この目標を見ると、北朝鮮が混ざす経済建設の方向性及び現状が改めてうかがえる。一言で言えば、「衣食住」の充足とエネルギー確保が最優先ということである。

 ちなみに、1980年10月に「80年代中に達成すべき」として提示された「10大展望目標」は、電力、石炭、鉄鋼、非鉄金属、セメント、化学肥料、織物、穀物水産物干拓地造成であった。今回の「12個重要高地」で新たに加えられたのは、住宅と丸太、鉄道貨物輸送であり、なくなったのは干拓地造成となる。こうした目標設定を見ると、北朝鮮が基本的な産業構造において、80年当時とほとんど変化(進歩)していないということが改めて感じられる。

 更に言えば、80年当時は、誇大ではあったにせよ、これら目標の具体的数値を示していた。今日、それを示すことさえできないということは、おそらく当時の目標を超えることができないためとも考えられる。目標数値を示さないままに、「達成」を呼びかけて果たしてどれだけの効果があるのか、はなはだ疑問と言わざるを得ない。