rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年1月18日 評論「化学工業部門の整備補強事業により拍車を加えなければならない」

 

 標記評論は、化学工業部門の関係者に対し、生産設備の整備補強を推進すべく奮起を呼びかけるもの。

 評論は、前段では、これまでの取り組み状況に関する問題を指摘している。「不合理な生産工程を改造し、新たな工程を確立するための事業」に取り組んできたが、「多くのものが不足し困難な中でも生産能力拡張工事を責任を持って進行し実践においてその成果を大きく発揮している単位がある反面、上ばかり仰ぎ見て、成果を上げられないでいる単位もある」というのである。それら不振単位の様相については、これに続く、「会議のたびに党決定に対する無条件的な執行を叫びながらも、実践過程において様々な難関にぶつかるとやる気をなくして座り込み今日明日と延期する単位があっては、主体的な化学工業発展の新たな章を活気をもって開くことはできない」との批判から端的にうかがえるところである。

 後段では、そうした状況を踏まえて、今後のあるべき取り組み姿勢を論じている。それは、まず、「幹部が科学技術を徹底して先行させ、単位に託された一つ一つの整備補強事業を科学的担保の下で周到精密に導いていく」ことであり、同時に、「化学工業部門のすべての勤労者」が「国の経済発展が自分達に掛かっているとの責任感を持って、先進科学技術で武装するため積極的に努力し・・新たな着想と発見、創案により整備補強目標遂行において大きく貢献」することである。

 ちなみに、後段の要求は、まさに昨日の本ブログで論じた「技術神秘主義」批判の内容をそのまま反映したものといえよう。幹部に対して「科学技術先行」と「科学的担保の下での周到精密」を求めるだけでなく、一般労働者に対しても、「先進科学技術」の習得を訴えているのである。

 繰り返しになるが、ここからも、北朝鮮が決して「思想一辺倒」に陥っているわけではないことが確認できる。ただ、問題は、その「科学技術」も、「魔法の杖」ではないので、それによる「創意工夫」だけを強調して、実質的には困難な課題解決の責任を現場に丸投げする姿勢にあるのではないかと考える。