rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年1月20日 最高人民会議開催状況(続報2):「国家予算報告」(高正範財政相)の注目点

 

ア 2022年予算執行の決算

  • 全般状況:収入100.7%で執行(対前年比101.5%)

        支出99.9%で執行

  • 費目別執行状況:社会主義経済建設=対前年比101.6%

        国家的な基本投資=100.1%

        戦争抑止力強化(国防費)=支出総額の15.9%

        経済戦線全般の活性化に必要な資金=支出総額の24.4%

        (そのうち科学技術部門は対前年比101%)

        農業部門(農村建設含む)=支出総額の1.6%

        防疫事業費=計画の121.3%

        社会主義文化建設(教育、保健等含む)=対前年比100.5%

  • 執行における欠陥:「一部単位において国家納付計画が未達」「一部省、中央機関において国家企業利得金を増加させる党の方針を貫徹できず」「原因は経済指導幹部が・・思想的覚悟が不足したことにある」「経済指導幹部は・・国家経済の全面的発展と利益より自分の単位の狭小な利益だけをまず考える硬直した思想観点と執務姿勢から抜け出さないと自力経済の持続的で展望的な発展土台を構築し正常軌道に乗せようとの党の構想と決心がいつになっても実現されないことを深く心に刻むべき」

イ 2023年予算

  • 予算収入=対前年比101%で編成。うち取引収入金100.3%、国家企業利得金101.2%。両者が収入総額の83.7%占める。中央予算収入が73.7%(その余は道・市・郡からの組み入れ)
  • 予算支出:対前年比101.7%。内訳は、経済発展と人民生活改善向上=45%、国防費=15.9%。
  • 経済関係部門別増加率:基本投資=対前年比100.3%、人民経済事業費=101%(うち科学技術発展事業費=100.7%)、農村建設・農業生産環境現代化=114.7%、
  • 社会関係部門別増加率:教育=100.7%、保健=100.4%、文化=100,3%、体育=100.1%

ウ コメント

  • 収入の伸び率が更に低下:2022年収入の対前年比101.5%に対し、23年収入は101%と更に低下している。ちなみに、予算総額の増加率は、2013年以降20年までは、105~106%であったところ、21年から101%台に低下。当該時期の経済不振を反映しているとみるべきだろう。
  • 国防予算15.9%を維持:これも2020年以降、同じ比率となっている。近年、言動面では、国防力整備の加速を喧伝しているが、少なくとも、この数字を見る限りは、国防費比率に有意の変化はないことになる(別会計のようなものがあるのかもしれないので、これだけでは判断できないが)
  • 経済建設費の比率が若干低下:23年度予算の「経済発展と人民生活改善向上(45%)」は、従前の「経済建設」に相当すると思われるが、それは2015年以降20年まで47~48%で推移していた。それに比較すると、若干減少したことになる。ちなみに、22年の「経済戦線全般の活性化に必要な資金(24.4%)」というのは、それらと比較すると半額近くでしかなく、おそらく異なる範囲で算出したものと考えられる。
  • 農村・農業関係予算が相対的に大幅増加:各費目とも101%前後の増加率にとどまっている中、23年の農村・農業関係予算だけが114.7%と相対的に高い伸び率を示している。昨年来の農村振興政策(あるいは食糧不足)の反映といえよう。ただし、そもそもの規模が予算総額の1.6%でしかなかったので(これが明らかにされたのはおそらく初めてのこと)、余りたいしたことはないのかもしれないが