rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年1月21日 最高人民会議開催状況(続報3):「平壌文化語保護法」など

 

ア 「平壌文化語保護法」について

  • 「報告」:「言語生活において主体を徹底して立てる事業の重要性について強調」、「言語生活領域における非規範的な言語要素を排撃」するものなどと説明の上、「該当法草案を具体的に解説」
  • 審議過程:法草案に対する「研究及び協議会」を開催、「提起された意見が我々の思想と制度、文化を固く守護するための強力な法的担保を準備する上で実践的意義があると認定し、法草案の該当条文に反映」の上、同法の採択を決定
  • 同法については、韓国語の影響排除が主な狙いと目されているが、それを直接示す表現はない。しかし、前掲の「主体」の確立とか「我々の思想、制度、文化」の守護とかといった表現からは、それをうかがうことが可能であろう。いずれにせよ、具体的にどのような規定を設けているのか、あるいはそれがどの程度の効果を発揮できるのかなどが注目される。

イ 中央検察所の事業報告について

  異例の議題であり内容・背景などが注目されたが、関連報道は抽象的で、実情をうかがうことはできない。ただ、最終的に、「(中央検察所が)社会主義憲法に規定された自らの任務を円満に遂行したと認め」、「事業報告を承認する」との決定が採択されているので、それほど深刻な問題があってのことではなく、一層の機能発揮を促す意味での議題化であったのではないかと考えることが可能であろう。

 ちなみに、今年に入って、朝鮮中央放送が「一検察幹部の手記」と題する連続サスペンスドラマの放映を開始した(これまでに2回放映)。朝鮮戦争当時、指導部内に潜在する敵と通謀している勢力を暴こうとする検察幹部を描いた話である。今次議題設定ともあわせて、体制内の不正腐敗や「本位主義」などの問題是正に検察の機能を発揮させようとの機運が生じているとも考えられる。

ウ 人事関係について

  今次会議で決定された人事は、いずれも最高人民会議関連の名誉職的なポストをめぐるものであり、政治的な意味合いはほとんどないと思われる。

 その中で、比較的実務職と思われるポストといえば常任委員会副委員長であろうが、新たに選出された金浩哲は、聯合通信の人物データベースによると、昨年9月開催の最高人民会議第5回会議で最高人民会議外交委員会の委員に補選された人物であり(それ以外の経歴は不詳)、対外関係分野の出身者と思われる。

 また、法制委員会の委員長に選出された李泰摂は、昨年末の党中央委全員会議で軍総参謀長から社会安全相に更迭された人物であり、それに伴う人事であろう。

エ 内閣総理の「報告」について(20日の本ブログ記載コメントの補足)

  • 昨年の成果に関し、金属工業部門への言及なし:同部門は基幹工業の筆頭であり(今年の課題に関する部分では冒頭に言及)、また、「5か年計画」の重要分野とされているにもかかわらず、「成果」がまったく言及されていないのは、同部門の昨年の結果が相当不振であったということの反映と考えられる。
  • 本年の経済分野の課題に関し、多くの部門で稼働・生産などの「正常化」を提示:その対策としては、原材料、エネルギーの確保(保障)や設備の修理・補修などに言及。そうした事情により、多くの部門で生産に支障をきたいしている実情を反映したものといえよう。