rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年1月24日 社説「社会主義愛国運動、革命的な大衆運動で忠誠と愛国の伝統をより輝かしていこう」

 

 標記社説は、金正恩が先の党中央委員会第8期第6回全員会議での「報告」において、「朝鮮革命固有の伝統である忠実性の伝統、我が国家固有の伝統である愛国の伝統をしっかりと堅持し継承していく」ことを強調しつつ、「党組織と勤労団体において、各種大衆的な愛国運動を活発に組織展開する上で提起される原則的問題を明らかにされた」ことを受けて、その趣旨を敷衍するものといえる。

 社説は、まず、そうした大衆運動、すなわち、大衆動員の必要性について、「革命偉業は人民大衆のための闘争であると同時に人民大衆自身が遂行すべき歴史的課題であるだけに、革命事業の成果如何は、大衆がその実行にどれだけ積極的に、広範囲に奮い立つかにかかっている」ことをあげる(確かにそのとおりであろう)。そのための有力な方法として、大衆運動を位置づけているのである。なお、ここで「広範囲」というのは、多くの人々という意味のとどまらず、大衆一人一人の生活領域のより多くの部分を革命事業に振り向けさせるという意味も込められているのではないかと考えられる。

 その上で、大衆運動の目的ないし効用として、まず、「すべての人民を無限の忠実性と熱い愛国心を帯びた真の人間として育てる強力な武器である」ことを指摘している。換言すると、忠誠心、愛国心を涵養し、発揮させることが太守運動の目的であるということであろう。

 次に、「集団的革新の火の手を燃え上がらせ、社会主義建設のすべての戦線において絶え間ない高揚を起こすための威力する手段である」と主張している。要するに生産・建設活動などの刺激策となるということである。これが、より直接的なねらいであろうが、そうした訴えは、今や、忠誠心、愛国心に訴えること以外、経済活性化の方策が尽きていることの反映ともいえよう。

 社説は、また、こうした運動を展開することによって、「後代が記憶し、模範とするであろう革命精神、愛国意志を祖国青史にはっきりと刻まなければならない」とも主張している。「後代」への貢献と同時に彼らかの尊敬を掲げることによる大衆運動参加の動機づけを企図したものと考えられる。

 最後に、その実践方策に関しては、「党組織と勤労者団体の役割を非常に高めなければならない」とした上で(前掲の金正恩の報告内容からしても当然の指摘)、「3大革命赤旗獲得運動と社会主義愛国林運動をはじめとしたすべての大衆運動が社会主義愛国運動、革命的な大衆運動となることができるよう実効性を高めるための方策を研究し実践していかなければならない」と訴えている。換言すると、現在は、こうした既存の「運動」が「社会主義愛国運動、革命的な大衆運動」としての機能を発揮していないということであろう。

 北朝鮮では、今年に入り、金正恩の前掲報告を受けて、「忠誠心。愛国心」を掲げて、かつての「愛国米献納運動」「建国思想動員運動」をはじめとする過去の大衆運動を回顧・顕彰する宣伝が盛大に展開されているが、本社説も、その一環といえよう。また、そこからうかがえる狙いは、何か新たな大衆運動を展開するということではなく、既成の各種「大衆運動」の実効性、機能を高めようということのようである。ただ、その程度の取り組みで、「運動慣れ」してしまっている大衆を本当に「積極的、広範囲に奮い立たせる」ことができるのか、疑問と言わざるを得ない。