rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年2月6日 党中央委第8期第12回政治局会議の開催を報道(加筆版)

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が2月5日開催されたことを伝える記事及びそこで採択された「政治局決定書」を掲載した。同会議の概要及び決定書の骨子は、次のとおりである。

1 会議概要

  • 政治局会議の参加者、運営等:政治局メンバーのみ出席(金正恩は、欠席)。趙勇元秘書が「司会」。
  • 主な審議事項:「党中央委第8期第7回全員会議拡大会議の招集に関する問題」を議題に「議題と会議日程、傍聴者選抜定形(基準の意味か?)を審議し、承認」
  • 決定事項:「2月下旬」に第7回全員会議拡大会議を招集するとの「決定書」を採択

2 決定書骨子

  • 現状認識:「農業の正しい発展戦略を樹立し、当面の農事に必要な該当の対策を講究することは、非常に重要で切迫した焦眉の課題」
  • 重要課題:「農業科学技術の優先的発展を推進し、全般的な灌漑体系の完備を促進すること」などに注力の必要
  • 全員会議の開催目的:「新時代農村革命綱領実現のための昨年の闘争状況を総括し、当面する農事問題と農業発展の展望的目標を討議」

 党中央委全員会議は、昨年12月末に開催されたばかりであり、それを二月もたたないうちに改めて、しかも農業問題だけに絞って開催するというのは、驚きであり、異例のことでもある。

 その背景について、韓国では、「食糧不足深刻化」のためとの受け止めが多く、その関連で「咸鏡道で餓死者が多数発生」などの「情報」まで紹介されている。

 しかし、上記の報道内容からすると、深刻で切迫した苦境の打開というよりは、むしろ、農業の長期的振興に拍車を掛けようとの強い意気込みがうかがえる。そうした取り組みをだらだら行うのではなく、「切迫した焦眉の課題」として緊張感をもって促進せよという、おそらくは金正恩の意向が働いているのではないだろうか。もちろん、食糧事情は潤沢でないことは間違いないであろうが、「多数の餓死者」が出るほどとも考えにくいというのが個人的印象である。

 

以下加筆部分

 本稿脱稿後、韓国聯合通信のホームページで、「消息筋」の伝えるところとして、「開城で連日、数十人規模の餓死者が出た」との情報を報じ、前述の中央委員会全員会議と関連付けるコメントを付した記事を読んだ。

 しかし、昨今の北朝鮮の報道は、例えば、今日の「労働新聞」にも「香料」の原料となる植物の栽培を奨励する記事が掲載されるなど、それなりに余裕のある生活を享受していることをうかがわせるものが少なくない。また、韓国報道では、近日中に大規模軍事パレードも実施される見込みであるという。それらと「餓死者続出」という状況は、本当に並存しうるものなのだろうか、というのが変わらぬ印象である。