rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年6月20日 評論「朝鮮労働党の領導は科学であり勝利である」

 

 標記評論は、本日の「労働新聞」の第1面に掲載されたものである。冒頭の「我が革命を画期的に前進させる上で重要な意義を持つ政策的問題が具体性、専門性、革新性をもって真摯に討議決定された党中央委員会第8期第8回全員会議議!」との表現からして、同会議の開催結果を踏まえたものと思われるが、そこで注目したいのが、同会議での言動などが報じられなかった金正恩をいかに位置づけているかである。

 結論を先に述べると、少なくとも同評論を見る限りでは、同人の指導権は従前同様に維持されているようにみえる。

 その根拠としては、まず、表題となっている「朝鮮労働党の領導は科学であり勝利である」との命題に関し、「これは、我が人民が敬愛する総秘書同志の卓越し洗練された領導の下で主導的で積極的な闘争により難局を打開しつつ・・上半年期間の厳しく激烈な闘争を通じてより心臓深く切感した哲理である」と主張していることを指摘できる。

 また、同会議報道でも示された上半年の様々な成果を具体的に紹介した上で、それらに関し、「敬愛する総秘書同志の非凡な叡智、賢明な領導の手腕があったからこそ、我が人民は・・経済建設の各分野においてもはっきりとした生産成長を成し遂げた」と主張して、金正恩の指導の成果と位置づけている。

 更に、視点を過去にも延長して、「最近、何年間だけを見ても、どれだけ胸を沸かせる成果が連発的に成し遂げられただろうか」として様々な成果に言及し、そうした経験に基づくものとして、「党においてやれと言うとおりにだけ行うとき、すべてが解決するというのが我々が得た哲理です」といった人民の声を紹介している。

 最後には、「我が人民は、敬愛する総秘書同志が陣頭において導かれる朝鮮労働党の賢明な領導にしたがって、・・首領に対する絶対的な忠誠心、社会主義勝利に対する確固不動の信念、苦難の中でより強くなった自力更生の力で、新たな勝利に向けた進軍をより加速していくであろう」と結んでいる。

 韓国報道によると、金正恩執権以降の党中央委全員会議で金正恩の発言が報じられなかったのは、大会期間中に開催される第1期会議を除いては、今回が初めてとのことであり、今次会議での金正恩に関する報道ぶりの背景でいかなる力学が作用していたのかについては、引き続き注目・検討すべき重要課題であると考えるが、結果としては(つまり、会議以前に内部的に何があったにせよ)、これまでのところ同人の指導権に大きな動揺は生じていないと見ることが出来るのではないだろうか。

 そして、そうした背景には、北朝鮮指導内で、これまで金正恩個人の権威を余りに巨大化させてきただけに、それを動揺させれば体制の安定を大いに毀損させかねないとの認識の一致が存在するのではないだろうか。