rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年7月24日 論説「偉大な戦勝の歴史的意義は永遠不滅である」

 

 標記論説は、「祖国解放戦争勝利70周年に際して」とのサブタイトルを付し、本日の「労働新聞」第1面を費やして掲載されたものである。

 同論説は、冒頭の「(祖国解放戦争戦勝の)意義を再度胸に刻むことは、わが世代において英雄的偉勲を創造していくことのできる思想精神的糧食を準備する重要な契機となる」との発想から、「祖国解放戦争(朝鮮戦争)戦勝」の意義及びそこから得られる教訓を論じるもので、「1」、「2」、「3」の3部構成となっている。

 このうち「1」では、国内的側面における意義を論じており、①「共和国の尊厳と名誉、自主権を死守し、自主的発展の環境を守り抜いたこと」、②「戦後(における)我が国社会主義革命と建設の偉大な歴史を方向付けることを可能にしたこと」、③「我が祖国と人民が永遠に勝利していける矜持高い伝統と財産を準備したこと」をあげている。

 次の「2」では、その「人類史的」な側面での意義として、①「米帝の世界制覇戦略実行を阻止破綻させ、人類の平和と安全を守護した」、②「世界政治構図を変化させ、自主と社会主義へと進む時代の流れを力強く推動した」と主張している。

 最後の「3」では、「7・27(戦勝記念日7月27日の意)が教えてくれる真理」として、①「自分の首領を絶対的に信じ、その領導に忠実な人民はいかなる強敵も退け必勝不敗であるということ」、②「全体人民の反帝階級意識が透徹していてこそ勝利者になることができるということ」、③「いかなる大敵も圧勝できる自衛力の上に永遠の平和がある」ということの3点をあげている。これを若干敷衍すると、①については、「偉大な首領様だけ信じつき従えば、生きる道も開け、首領様の教え通りにさえすれば打ち勝てない大敵も克服できない難関もない、これが戦火の中で我が人民が体得した勝利哲学である」という。また、②については、「祖国解放戦争と今日までの反米対決戦が示すように階級意識、主敵観が揺らぐことのないとき血で勝ち取った勝利の伝統をしっかりと粘り強く引き継いでいける」と、③については、「朝鮮半島において戦争の危険を完全に除去しようとするなら絶対的な国家安全担保力を備えなければならない。軍力強化に終着点というものはありえない。・・いかなる代価を払っても、軍事的強勢は止まることなくより速い速度で維持拡大しなければならない」などと主張している。

 その上で、最後に、「(以上のような)真理は、認識することで終わってはならない。・・高貴な7・27の真理が新世代勤労者と人民軍将兵の心臓ごとに鼓動するが故に勝利は永遠に朝鮮のものである」として、「新世代」への思想教化を訴えている。

 同論説の最大の眼目は、「3」の部分、すなわち、首領(金正恩)に対する絶対的信頼・服従、思想的純潔性の堅持、軍備増強の必要性にあると思われる。そして、そうした主張は、北朝鮮指導部が「新世代」人民に対して説得・受容させたい事柄が何であるかを如実に示しているといえよう。

 北朝鮮国内で先般来活発・盛大に展開されている「7・27」に向けた各種の行事・宣伝活動(近日中に予想されている軍事パレードも含め)もまた、そうした国内向け思想教育を基本的狙いとしたものであることは言うまでもない。

 換言すると、そうした宣伝キャンペーンの中で示される激しい反米姿勢は、現実の外交・安保政策としての対米政策とは自ずと次元の異なるものであり、当然一定の関連性は有するものの、必ずしもそれを全面的に反映したものではないことに留意すべきと考える。