rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年8月12日 台風6号の被害防止を自賛

 

 本日の「労働新聞」は、「自然の狂乱に巨木は根を抜かれても党と国家に対する人民の信頼心はより深く根を下ろす 台風6号の影響を受けるとの予報が伝えられたときから数日間の昼夜にあったできごと」との見出しを掲げて、10日から11日にかけて北朝鮮に襲来した台風6号に関し、被害防止の努力が奏功した旨を自賛する記事を掲載した。

 同記事は、同台風被害の状況を具体的には報じていないが、「全国が高度の覚醒と緊張で注視した台風6号はついに去りゆき、我々の生活には平穏がもどった。共和国創建75周年を輝かしい労力的成果で輝かすための我が人民の闘争は、一段の難関に打ち勝った信念と勇気高く、より活気を帯びて展開されている」として、その被害が比較的軽微であったことを示唆した上で、そうした結果を通じて、「(世界各地での自然災害発生を指摘した上で)この地では、自然の狂乱が抱かせた不幸の涙と嘆きではなく、むしろ、労働党万歳の声、社会主義万歳の声、社会主義進軍の歩調の音が強く轟いている。自然の狂乱の中で巨木は根を抜かれることがあっても、朝鮮労働党社会主義制度に対する人民の信頼心はより深く根を下ろした」と主張して、台風被害の防止に向けた党の領導、取り組みを口を極めて称賛している。

 実際のところは、台風6号は、韓国南海岸に上陸後、陸上を北上したため、北朝鮮領域に至った時点では、その勢力が相当減衰しており、平壌付近で温帯低気圧に変化したとされており、北朝鮮での被害が軽微であったとすれば、それは、そうしたことの結果が大きく作用したためと考えられる。

 そうは言っても、北朝鮮が年初来、自然災害防止に重点的に取り組み、とりわけ今次台風に際しては、これまでにないほど対策強化を強調し、結果、台風の弱体化という自然条件に助けられたとはいえ、そうした取り組みが奏功したのは事実である。

 そういう意味で、年初以来の自然災害防止政策は、幸先良い結果を示すことができたと言えるが、今後とも台風到来の可能性はないとはいえず、その前途は楽観できない。そのことは、北朝鮮当局も当然承知しており、引き続き、今次「成果」を根拠に、「党(=金正恩)の政策に従って進めば勝利は確実」との主張の下、灌漑設備等の更なる整備を推進していくものと予測できる。いずれにせよ、台風6号の襲来は、人民の「信頼心」獲得の心を砕いている北朝鮮当局にとって、文字通り「雨降って地固まる」の結果をもたらしたといえよう。