rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年8月17日 金正恩に対する「首領」呼称使用回数、北朝鮮餓死者数

 

 韓国聯合通信が標記に関する韓国機関発の情報を報じているので紹介する。

 前者に関しては、統一部が17日に「最近北韓情勢総評」と題して行った「言論ブリーフィング」において、北朝鮮メディアが金正恩を「首領」と呼んだ回数を明らかにした由である。それによると、そうした表現は、「2018年に慎重に登場」した後、2020年:4回、2021年:16回、2022年23回であったところ、今年は7月末までで27回に達したという。

 この数字自体は、「北朝鮮メディア」の範囲などが分からず検証しようがないが、本ブログでもかねて指摘してきたとおり、傾向として金正恩の「首領」の地位が定着しつつあることを改めて実証するものといえよう。

 後者については、国情院が17日に国会情報委員会(非公開)で行ったとされる内容を議員が伝えたもので、それによると、「北(朝鮮)で1~7月に発生した餓死は約240件で、直近5年間の平均(約110件)の2倍以上に増えた」由である。

 この数字も、そもそもこうした統計が本当に存在するのか(北朝鮮当局としても把握しうるものなのか)など、根拠が甚だ不透明で、にわかに信じがたいものであるが、仮に、これが実際の数字であるとしても、北朝鮮の人口(約2,500万人)からすると、厳しいと言われる今年に入って現在までの餓死者発生率が10万人に1人以下となる。つまり、人口10万余の都市・郡とかごとに1人ということになる。

 そうであるとすれば、そうした「餓死者発生」とか、その「増加」という現象が北朝鮮社会全般に及ぼす影響ないし北朝鮮の一般の人々の生活を反映する程度という観点からすると、それは、さほど特筆大書すべき事柄ではないようにも思える。もちろん、そうした極端事例が食糧事情の悪化という一般的傾向を象徴的に示していることは否定できないが、逆に、そうした傾向が存在するとしても、それを「餓死者増加」という現象によって代表させるのは、北朝鮮社会(人民生活水準)に対する等身大の理解をむしろ妨げる結果を招くのではないだろうか。

 そういう意味で、今回の国会報告を通じて、これまで「餓死者」の「大量発生」とか「倍増」などと抽象的に伝えられてきた、この情報の実際の数字(規模感)が示されたことは、非常に有意義であったと考える。