rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年8月19日 総参謀部代弁人声明を通じて米軍偵察機の経済水域侵入を非難

 

 朝鮮中央通信は、8月18日、標記に関する「朝鮮人民軍総参謀部代弁人声明」を報じた。その骨子は、次のとおりである。

  • 米軍機侵入経緯:「米軍戦略偵察機は、17日朝5時38分から6時37分の間、元山東側520㎞から端川東側430㎞までの海上上空を反復旋回飛行し、3回にわたって我々経済水域上空を最大14㎞の深さまで無断侵犯し・・偵察行為を敢行した」
  • 北朝鮮軍の対応措置:「東部反航空(防空)師団の追撃機(複数)を米軍戦略偵察機の侵犯空域に緊急出撃させ・・(米軍機が)我が軍追撃機(複数)の対応措置により7時15分ころに退却(後も)・・午前9時まで・・対応警戒任務を遂行した」
  • 今後の対応方案:「我が方経済水域である元山東側450㎞界線に新型反航空ミサイルを搭載した艦船を常時展開させ・・米軍戦略偵察機の無断侵犯行為を阻止し・・駆逐するための作戦方案を検討している」、「我が軍隊は、共和国の主権を守護するためのいかなる物理的対応も辞さないであろう」

 北朝鮮が米軍機の経済水域上空への「侵犯」を非難するのは、去る7月10日付け国防省代弁人談話及び同日と11日付けの2回にわたる金予正談話に次ぐものである。このときの金予正談話は、そうした飛行への「断固たる対応行動」を「委任により」表明し、「繰り返される無断侵犯の際には、米軍が非常に危険な飛行を経験することになるであろう」などと警告していた。しかし、今次声明は、「去る7月28日、米軍戦略偵察機が我々側経済水域上空を無断侵犯し偵察行為を敢行した」としており、そうした警告が結果的に虚言に終わっていたことを明らかにしている。

 また、今後の対応方案についても、新型対空ミサイル搭載艦船の当該水域への常駐による駆逐を打ち出しているが、それは検討中ということでやや迫力に欠ける印象を否めない。本当に「断固たる対応」を実行しようとするなら、黙ってそうした艦船を派遣しておいて、「侵犯」が行われた際には攻撃することも可能であったと思われる。しかし、実際には、そうした過激な行動の代わりに、わざわざ、そうした準備を検討していることを明らかにすることによって、牽制の姿勢を示すにとどめている。米軍偵察機撃墜を実行した往年の冒険主義路線とは、異なる路線をとっていることが改めてうかがえる。

 

 余談であるが、朝鮮中央通信は、8月16日、去る7月18日に板門店を参観中に越北した米軍兵士についての「中間調査結果」を報じていた。上記声明を閲覧する際に気が付いたので、その要旨を紹介しておく。

 記事によると、「南朝鮮駐屯米軍所属の二等兵トゥレビス・キング」は、「自らが(板門店を通じて)共和国領内に不法侵入した事実を認定」しており、「米軍内での非人間的な虐待と人種差別に対する反感を抱き、朝鮮民主主義人民共和国に赴く決心をしたと自白」し、「不平等な米国社会に幻滅を感じたとしつつ、我が国か第3国に亡命する意思を明らかにした」としている。なお、「調査は継続される」とのことである。