rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年8月21日 金正恩の海軍東海艦隊近衛第2水上艦船隊視察を報道

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が海軍東海艦隊近衛第2水上艦船隊を視察し、金明植海軍司令官らがこれを出迎えたことを報じる記事を掲載した(視察日は非公表)。その骨子は、次のとおりである。

  • 部隊視察状況:「水上艦船隊艦船の戦闘動員態勢と戦争準備実態、軍人の軍務生活、軍艦改造計画を具体的に了解」、「警備艦661号に乗船され、艦の武装状態と戦闘準備態勢を具体的に了解・・高く評価」
  • 「戦略巡航ミサイル」発射訓練を参観:「艦の戦闘的機能とミサイル武器体系の特性を再確証し海兵を実戦環境における攻撃任務遂行動作に熟練させることに目的を置いて実施・・動員態勢と攻撃能力が完璧に評価」
  • 指示事項①=装備現代化、訓練実戦化等:「現代的な水上及び水中攻撃手段と防御手段を万端に備えた万能の強力な主体型軍種集団として強化発展させる・・海軍強化発展方針を披歴」、「第8回大会が提示した海軍武力発展路線をしっかりと堅持し・・海軍武装装備現代化実現に一層拍車を加えることにより現代性と戦闘能力を早い期間内に画期的に向上」、「常時的な動員性を徹底して維持するとともに・・戦闘訓練強化(により)・・不利な環境下でも託された戦闘任務を能動的に遂行できるよう実践能力を不断に向上」
  • 指示事項②=思想教育強化:「戦闘の場で実際に必要なのは武装装備の数的、技術的優勢ではなく、それを扱う軍人の圧倒的な思想精神的威力である」、「前世代海軍勇士の戦闘精神」を継承・発揮すべし

 上記記事中の「戦略巡航ミサイル」については、実際は、対艦ミサイルであるとの指摘がある(韓国軍関係者)。そうであるとするなら、米軍偵察機「侵犯」への対抗措置としての対ミサイル搭載艦船の当該水域への配備検討(18日付け朝鮮人民軍総参謀部代弁人声明)ともあわせて、東海岸における一種の「接近拒否」構想の表れともいえよう。

 また、添付の写真には、レーダー電波の反射を極小化による「ステルス」型をした艦船の姿もあり(実際の効果は不詳だが)、海軍の現代化進捗を印象つけている。

 ただし、金正恩の「不利な環境下」での任務遂行、「武装装備の数的、技術的優勢」の重要性否定などの発言からは、海上戦力の全般的な劣勢を認識した上で、その対抗策を模索していることがうかがわれる。