rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年11月15日 新型中距離弾道ミサイル固体燃料発動機の試験実施を報道(加筆版)

 

 本日の「労働新聞」は、ミサイル総局が標記試験を11月11日及び14日に実施したことを報じる朝鮮中央通信の記事を掲載した。記事の骨子は、次のとおりである。

  • 新型の中距離弾道ミサイル用の大出力固体燃料発動機(エンジン)を開発し、その1段階発動機の初噴射試験を11月11日に、2段階発動機の初噴射試験を11月14日に成果裡に実施した
  • 「今次試験は・・発動機の技術的特性を評価することに目的を置き」・・「非常に満足すべき結果が収められ(た)」
  • 「(今次)試験を通じて、新型の中距離弾道ミサイル武器体系の開発を頼もしく推進できる確固たる担保が整えられた」

 北朝鮮は、既に固体燃料エンジンを使用した長距離(火星18)及び短距離の弾道ミサイルを開発済みであり、今次試験は、その中距離版の開発が進展していることを示すものである。したがって、それほど画期的な出来事とは考えにくいが、おりしも、米韓の国防相会談での対北抑止態勢の強化方針が改めて確認・表明されたことなどを受け、それへの対抗の意味も含め、このような報道をおこなったものと考えられる。

 最近の米韓側の動向の重みに比較すると、こうした「対抗策」は、それだけであれば、抑制的とも言えるが、18日が新たに制定された「ミサイル工業節」にあたるだけに、そうした評価はしばらく留保しつつ、しばらくの間、後続の動向を注視するべきであろう。「10月」に予定されていた偵察衛星の打ち上げ時期も注目される。

 ただ、今次報道の中では、「2023年度国防科学発展及び武器体系開発計画」におけるミサイル工業部門の重大課題が大陸間弾道ミサイル「火星18」と中距離弾道ミサイルの更新であったとしている。それによれば、同部門の今年の課題は概ね達成済みということになり、更なるミサイル発射は必ずしも必要ないとも考えられる。

以下加筆

加筆

 なお、固体燃料使用の長距離弾道ミサイル用の開発に際しては、昨年12月15日に「大出力発動機地上噴出試験」を金正恩の「指導」の下実施した後、約4か月後の本年4月13日、「大出力固体燃料多段階発動機」を搭載した「火星砲18」の試験発射を同じく金正恩の指導下で実施した。これを勘案すると、固体燃料型の中距離弾道ミサイルについても、概ね来年春ころ発射の可能性が高く、さすがに年内発射は困難なのではないだろうか。