rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年1月21日 崔善姫外相ロシア訪問結果に関する「外相補佐室公報」を掲載

 

 本日の「労働新聞」は、標記「公報」(1月20日付け)を掲載した。その内容は、プーチン大統領が早期に訪朝する意向を示した部分を除くと、概ね崔外相の訪ロ中の動向に関するこれまでの報道を要約したものにとどまっている。その注目部分は、次のとおりである(引用の順序は一部改めた)。

ア プーチン大統領訪朝関連動向

イ 双方合意事項

  • 「朝露両国の核心利益を守り、自主と正義に基づく多極化した新しい国際秩序を樹立する上で戦略的協力と戦術的協同を一層強化する強い意志を披歴した」
  • 「朝露両国の関係を戦略的な発展の方向で新たな法律的基礎の上に引き上げ、全方位的に拡大し、発展させるための実践的問題の討議で一致した共感と満足した合意を遂げた」
  • 「米国とその同盟勢力の無責任で不当な挑発的行為が地域と世界の平和と安定に及ぼす否定的影響について深い懸念を表し、国連憲章とその他の国際法の精神に徹底的に立脚して両国の対外政策機関の緊密な協同と共同歩調で地域情勢を調整していくことで合意した」

ウ 相手国に対する期待表明等

  • 「(北朝鮮は)今後もロシア連邦が全ての方面で自主的かつ独自的な政策と路線を引き続き堅持することによって、国際平和と安全保障と、平等で公正な国際秩序の樹立に大きく寄与するとの期待を表した」
  • 「(ロシアは)共和国がウクライナでの特殊軍事作戦に関するロシア政府と人民の立場に全的な支持と連帯を送っていることについて深い謝意を表した」

 以上の「公報」内容のうち、プーチン訪朝については、「早いうち」が具体的にどの程度なのかは判然としないが、あるいは、3月の大統領選挙以前にも実施し、大歓迎を受ける場面を国内に見せつけることによって、ロシアが決して国際的に孤立しているわけではないとの印象を与え、選挙に良い結果を及ぼすことを期待しているとも考えられる。

 次の双方合意事項は、訪ロ中の報道で用いられた表現と大差ないが、15日の最高人民会議での金正恩演説での外交関係の方針に関わる表現(20日の本ブログ参照)を意識したものになっているようにも思える。

 最も興味深いのが「ウ」の部分で、北朝鮮は、ロシアの反米姿勢の「堅持」とそれに基づく「平等で公正な国際秩序の樹立」(これは、北朝鮮がかねて批判する「二重基準」の排除などを意味するのであろう)を期待し、一方、ロシアは、ひたすらウクライナ戦争への「支援」を求めている。ここに現在の朝ロ関係の核心が反映されているように思える。