rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年3月9日 論説「我が党の攻撃的な革命思想と領導は全面的国家富興をもたらす強力な力である」

 

 本日の「労働新聞」第1面に掲載された標記論説は、冒頭で「不断の攻撃戦は敬愛する金正恩同志の革命領導方式の重要な特徴である」とした上で、そうした特徴を持つ政策展開を称揚したものであり、その骨子は、次のとおりである。

  • 偉大な党中央の攻撃的な革命思想と領導は、試練と難関が重畳する中でも我々式社会主義が全面的発展を成し遂げるようにする原動力である
  • 偉大な党中央の攻撃的な革命思想と領導は、主体的力量を非常に強化し自力繁栄の新時代を切り開く強力な推進力である
  • 偉大な党中央の攻撃的な革命思想と領導は、重心の鍵を把握し全般分野において新たな発展局面を切り開く科学的な領導である
  • 敬愛する金正恩同志の革命領導方式は、祖国と人民の運命、革命偉業の対する崇高な責任感と遠大な理想に根ざしている
  • 敬愛する金正恩同志の革命領導方式は、自らの力に対する絶対的な確信に基礎を置いている

 以上の表現のうち、標題の「党」及び本文中の「党中央」がいずれも金正恩を指すことはいうまでもない。同様に、①から③の「革命思想と領導」と④及び⑤の「革命領導方式」も、事実上、同義と考えて良いのであろう。要するに、ここで訴えているのは、金正恩の政策展開が、社会諸分野の同時並行的で自力による発展を志向しつつも焦点を見極めた戦略的で、将来性、楽観性に富んだものといった主張であろう。

 こうした論説掲載が金正恩の「地方発展20×10政策」提起を背景にしたものであることは言うまでもないであろう。

 ただし、その狙いを更に突き進めて考えると、「地方発展20×10政策」に対する歓迎の民意を前提に、それを題材にして、金正恩の偉大性を称揚するという積極的なものであるのか、あるいは、逆に、同政策の妥当性ないし実現可能性などに対する疑念を前提に、同政策の正当性・可能性などを主張しようとの、いわば防衛的なものであるのか、との疑問が浮上してくる。もちろん、両者は、相互排他的なものではなく、同政策を歓迎している者にも、疑問視している者にも、「効き目」があるように書かれているともいえる。筆者(趙学哲・音訳)は、果たしてどんな気持ちで執筆したのであろうか。 

 なお、標題に用いられている「攻撃的な革命思想」との表現については、平井久志『金正恩の革命思想』(221頁)によると、2021年1月10日付け「労働新聞」に掲載された平壌市党委員会の金ボムソク副委員長の寄稿文に「敬愛する最高領導者同志の攻撃的な革命思想」との表現が用いられていたそうであるが、余り一般的に用いられる表現とはいえないであろう。野心的、大胆というニュアンスを出したいが故の表現と考えられる。