rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月17日 社説「偉大な白頭霊将の駿馬行軍の道に従って必勝の信念も高く前へ」

 昨日の記事で金正恩白頭山頂で考えた「作戦」とは何か、という問題提起をしたが、この社説は、まさにそれに答えるもので、我田引水かもしれないが、それが国内向けの動員強化策であったことを示していると考える。以下、やや長くなるが、そう判断する根拠を示したい。

 社説は、まず、金正恩白頭山登頂を「白頭で開拓された主体革命偉業を最後まで完遂されようとの信念の宣言であり、この地の上の世界が仰ぐ天下第一強国を必ずや樹立されようとの意志の噴出」と意義付けている。それが長期的な社会主義建設を視野に入れたものであることを示す表現と言えよう。

 また、同登頂を受けて「今日、我々が掲げていかなければならない闘争の旗幟」は「白頭の駿馬速度で新たな勝利に向け最全速前へ」であるとしている。これは、まさに過去の国内向けの動員強化キャンペーンに際し掲げられたスローガンに類するものである。

 更に、登頂の路程について、①「祖国と人民の尊厳と運命を固く守護しようとの気迫の充満した透徹した民族自存の道」、②「我が人民を信じ自体の力で強国の大業を成し遂げる鉄石の信念が込められた自力富強の道」、③「神話的な進軍速度で疾風怒濤に進む継続前進、連続攻撃の道」と比喩している。このうち①は対内・対外の両義的であるが、②、③は明らかに国内建設を念頭においた表現と言える。

 加えて、社説は結びの部分で、金正恩のそのような身をもっての呼びかけにいかに応えるべきかについて、①「敬愛する最高指導者同志の構想と意図を現実に花開かせていく実践家」、②「敬愛する最高指導者同志の大きな信頼と期待に高い実力と実績で報いる革命人材」になろうと訴えている。ここからも前述と同様の結論がうかがえる。

 ちなみに、同日の労働新聞は、この社説の外、昨日の金正恩白頭山登頂報道に接した各層人民の「反響」を紹介しており、今次登頂が国内的に大々的な宣伝材料として用いられていることを示している。

 このほか、金正恩の今次登頂とは直接関係するものではないが、同日掲載の「白頭の革命精神を千万の心臓ごとに―各地党組織において」と題する記事は、各地の党組織における「白頭の革命精神」に関する思想教育活動を紹介した上で、「このような教育事業は白頭の革命精神を骨身に深く刻み、国家経済発展5か年戦略目標遂行のための総攻撃戦に奮い立った大衆の精神力を一層噴出させている」と結んでいる。金正恩の今次白頭山登頂も、まさにこのような路線を加速させたものと考えるべきであろう。

  なお、昨日の登頂記事添付の写真に関して、金正恩の姿だけで同行者の姿なしと記したが、その後、北朝鮮の報道機関(朝鮮中央通信)が妹・金予正ら同行者も一緒の写真を配信したそうである。一人ひとりを確認したわけではないが、地理的に考えても、おそらく同日に報じられた三池渕郡建設現場視察に同行した幹部が白頭山に同行したと考えられる。そこで名前を上げられた幹部の中には、対米関係あるいは軍事関係を主に担当する者は含まれていなかった。そういった点からしても、金正恩白頭山頂で考えたことが対米ないし安保がらみの作戦との推測は、自分の関心に引き付けての解釈というバイアスが働いた結果であったのではと言わざるを得ない(まだ結論が出ないうちからここまで言うのも性急かもしれないが)。