rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月10日 評論「敬愛する最高領導者金正恩同志の不朽の古典的労作をひもといて 精神力の強者になれ」

 

 標記評論は、2016年2月22日、「金正恩が党と軍隊の責任幹部たちと席を共にして」した談話「70日戦闘を力強く展開し、党第7回大会を勝利者の大会として意義深く迎えよう」のさわりを紹介し、その実践を訴えるものである。

 同評論によると、金正恩はこの談話を通じて、「70日戦闘期間に建築物を新たに建築し、生産を増やすことも重要であるが、より重要なことは幹部と党員と勤労者を我が党の革命思想によってしっかりと武装させ政治的に、階級的に覚醒させ、大衆の精神力を高く発揚することであることを教えて下さった」。

 また、同談話では、「政治思想事業を尖入式に展開しすべての幹部と党員、勤労者の精神力を最大に爆発させることによって新たな時代代表精神が創造創出されるようにする問題、生産成長の予備が群衆の中にあり、すべての問題解決の鍵は生産者大衆の精神力を発動するところにあるだけに、幹部が労働者、農民をはじめとした生産者大衆の中に深く入り込む問題」などが示されているそうである。

 実は、大変恥ずかしながら、金正恩の上記2月22日「談話」が既に公開されたものなのか否か直ちに確認できないのだが、いずれにせよ、それに関する評論が何故今日掲載されたのかは、一考の価値があろう。22日まで待てない、とまでは言えないにせよ、今直ぐにでも訴えたい理由があったと考えられるからである。

 上掲の談話からの引用部分から推測するに、この評論が訴えたい最大の眼目は、大衆運動の狙いは精神力の発動にあり、それがあらゆる問題解決の鍵になる、ということではないかと考えられる。とすれば、そのような主張は、おそらく現在進行中の「正面突破戦」を念頭に置いて、そこにおいても適用されるべきとの主張につながるものではないだろうか。更に想像を逞しくすれば、同評論は、今後、「70日戦闘」に匹敵するような何らかの動員運動が設定される可能性を示唆するものと考える余地もあろう。

 ただより重要なことは、金正恩の談話を根拠に、現下の最重要課題が精神力の発動であるとの主張がなされていることである。それは、換言すると、制度・機構などにおけるより具体的な変革の必要性を希薄化させることに通じるとも考えられる。何故、そういうことを言うかというと、12月の中央委員会会議における金正恩の報告では、国家の運営制度における革新の必要性が主張されていたにもかかわらず、いまだにそれが具体化していないからである。もちろん、それについては、現在準備中である可能性もあろうが、精神力の問題に焦点を移すことによって、制度改革などの問題を回避ないし矮小化しようとの動きが進められている可能性も否定できないように思われる。過剰な推測かもしれないが。