rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月28日 評論「質向上すなわち増産であり節約である」

 

 「質向上」への取り組み強化は、「正面突破戦」で示された柱の一つといえるが、本評論は、そのような取り組みが打ち出された背景事情を端的に示すものである。

 評論は、「質向上」について、まず「増産し節約する上で鍵となるもの」として、その重要性を改めて強調した上で、それが持つ意義を二つあげている。

 第一は、「国の経済土台を強固に固めるための優先的要求」であるという点である。そのような主張の背景として指摘されるのは、「最近、我々の製品と建設物の質は過去に比べてはるかに改善され、人民から好評を受けているが、その成果は、全局的範囲に拡大できずにある。いまだに一部の単位では人民の要求と関連単位の生産には関係なく質の低い製品を引き続き作り出しており、建設部門では対象建設を質的に行えず、反復施工する現象が克服されずにいる」との事情である。

 更に、こうした現象の深刻性について、「すべてのものが不足し困難なときに、生産物が滞貨され、資材と資金を浪費することは、国の持続的な発展に大きな障害を与えることとなる。このような弊害をなくさなければ、いかに生産と建設をしても意味がなく、国の経済も耐えていけない」と強調している。

 第二は、「大衆の愛国的熱意を喚起するための必須の要求」であることである。このような主張の背景にあるのは、「今、国内産製品の中には質が低いものも少なくない。それであるから、人々の中で輸入病と他人に対する依存心がなくならないでいる」との事情である。国産品の質の向上を通じて、人々の自国に対する矜持を復活させることを目指しているといえよう。

 最近の「質向上」呼びかけの背景に、以上のような切実な現状が存在することが改めて確認できる。ただ、そのような事情の更にその背景には、単なる物資不足とか技術水準の低さといった問題以前の、生産現場における勤労者更には経営陣の姿勢・発想の問題があるのではないかとも感じられる。つまり、与えられた生産量さえ完遂できれば、製品の消費者の使い勝手については我関せずといった発想があるのではないだろうか。そうであるとすると、この「質向上」問題も、結局のところ、「正面突破戦」に関連して取り上げられる他の問題同様、「意識改革」の問題に帰着することになろう。