rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

3月17日 評論「職業愛と実力」

 

 「職業愛」すなわち、自分の仕事に対する愛着、誇りを持つことを訴える論調がしばしば登場していることは、かねて本ブログでも紹介してきたところであるが、標記評論は、それらとはやや趣が異なり、そのような愛着も単なる情緒的なものに終わっては意味がなく、その仕事を適切に実践していく実力が伴わなければならないとして、仕事に必要な実力の涵養、そしてその伝承こそが本当の「職業愛」の発現であるということを訴えるものである。

 そのような実力重視の傾向は、冒頭に引用した金正恩の「お言葉」で端的に示されている。それは、「人を評価する基準が党と首領に対する忠実性であるなら、その忠実性を量る尺度は、まさしく実力、実践行動です」というものである。

 そこで、「本当に自分の職業を愛する人は、はじめは仮にその分野の初学徒であったとしても、粘り強く努力して早期に優秀な実力家になるものである」と主張する。

 更に評論は、自分自身だけでなく後輩育成の必要性を訴える。「一生を高い実力で党が託した哨所をしっかりと守りつつ、血を分けた肉親でもない多くの新世代たちに自分の高い技術と技能を惜しみなく譲り渡し、職場の柱として育てた」人物を模範として紹介し、「自分の職場が自分が働く当代だけでなく、後世にも限りなく輝くことを望む彼の愛国の心がどれだけ高潔であろうか。我が祖国に必要な真の職業愛は、まさにこのようなものである」と称賛している。

 現代日本人の感覚からすると、「血を分けた肉親でもない」からと言って職場の後輩に自分の知識や技を伝授することを厭う人がいるのかとの疑問はあるが、それはさておき、以上の主張は、ある意味日本では当然のことのようにも思われる。しかし、北朝鮮の多くの職場には、それを敢えて主張しなければならない状況があるのであろう。評論の表現から推測するに、それは第一に職務に対する無責任・投げやりな姿勢、第二に日常的な縁故主義ではないだろうか。