rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月26日 論説「正面突破戦は連帯的革新を要求する」

 

 標記論説は、「党創建75周年を迎える今年を正面突破戦の偉大な勝利の初年として輝かそう」とのサブタイトルを付しており、先般の順川リン肥料工場竣工を契機とし、それに習っての成果の連続的拡大、すなわち「連帯的革新を起こすこと」の意義ないし必要性として、次の2点をあげている。

 第一は、「人民経済の均衡的、持続的発展を成し遂げるための根本担保」となるということである。論説によると、「今日、我が党は、すべての部門、すべての単位において生産を正常化することについて強調している」のであり、「生産正常化は、各部門、単位の密接な連携を前提とする」ため、各部門がバランスよく、遅れることなく発展していくことが必要不可欠であると主張する。そして、それを実現する上で「警戒すべきものは本位主義である」として、各単位が自らの利益だけを優先し、国家利益を無視した行動をとることについて、「協同生産規律が紊乱され、人民経済計画がまともに執行できなくなる」結果を招くものとして厳しく戒めている。

 第二にあげられるのは、「新たな勝利に向かって継続革新、継続前進していくための重要な担保」ということである。これは、「模範単位の成果と経験を関連部門、関連単位へと急速に伝播させる」ことによって、「追いつき学び、追いつき追い越すための競争熱風の中で新たな基準、新たな記録、新たな奇跡が創造され」ることを期待するものである。このような運動が「些少な沈滞も足踏みもなく、継続革新、継続前進していく原動力」となるとの主張である。

 なお、このような訴えは、5月21日付けの本ブログ記事で紹介した「肯定感化」方式に基づくものといえる。そのことは、論説の冒頭に引用された金正恩の 「模範単位を創造し、それを火種として連帯的革新を起こすことは、我が党の伝統的な事業方法です」との言葉が端的に示している。

 そのような成果拡大の方式は、とりわけ第二の部分に適合するが、第一の部分に関しても、精神論的に他所で成し遂げられた成功に続こうとの呼びかけを基調として奮闘を督励するという意味で、「連帯的革新」と称しているのであろう。ただ、そこで期待されている成果が、「生産正常化」であるということは、「連帯的革新」という勇ましい言葉とは裏腹な北朝鮮経済の厳しい実情を改めて浮き彫りにするものである。

 ちなみに、やや余談であるが、冒頭で引用した「正面突破戦の偉大な勝利の初年」との言葉は、「正面突破戦」が何年にも及ぶ方針として認識されていることを示すものといえる。言葉の印象から何か短期決戦を意図しているようにも感じられるが、そうではなく、相当長期間に及ぶ、いわば「持久戦」を想定していると考えるべきなのであろう。そして、そのような時間軸は、おそらく対米交渉に関しても適用されると考えるのが妥当なのであろう。