rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年2月19日 評論「党中央委員会第8期第2回全員会議の基本精神を深く刻もう」

 

 標記評論は、先の全員会議の「基本精神」として、2つの点をあげている。

 第一に、「まず5か年計画の初年度から革命的進軍の歩幅を大きく踏み出し党大会の権威をしっかりと保衛しようするもの」であるという。これは、「5か年計画の初年度から実際的な変化、実際的な前進をもたらすことのできる具体化された実践の武器、行動の武器」、すなわち、実現不可能なほど高すぎず、かつ5か年計画到達を見込める、過不足のない初年度計画を具体的に提示したことを意味すると考えられる。「党大会の権威を保衛」というのは、大会で決定したばかりの計画の実現を初年度から事実上放棄するかのような計画を立てたのでは、大会(ひいては、それを主導した金正恩)の権威が保てないという意味であろう。

 第二にあげるのは、「人民が待ち望む実際的な結果を必ずや成し遂げよう」というものである。換言すると、「5か年計画の初年度から計画(目標)を低く立てれば、人民に実際的な福利をもたらすことができず、いつになっても人民生活向上に画期的前進が成し遂げられない。(そうしていれば)後には党に対する人民の信頼にひびが入るようになり、これは、なにをもってしても補償できない」ことをおそれているのである。「実際的な変化をもたらすための対策が立てられたことは、すべての人民に光明な明日に対する信念と楽観を増してくれている」と主張する。

 このような評論の内容からは、当初内閣が作成した初年度計画の原案が5カ年計画の達成を保証するものになっておらず、また人民生活における目に見える成果を期待させるものでもなかったことがうかがえる。そして、金正恩は、そのような内閣の姿勢に自己の権威に対する絶対的服従精神の欠如(挑戦とはいわないまでも)を感じたのではないだろうか。

 もう一つ注目されるのは、人民生活の実際的向上の早期実現の必要性を力説する金正恩の主張の背景は、それがもたらされない場合(つまり現状を改善できない場合)、人民の体制不満が高揚することへの危惧が存在すると考えられることである。伝えられる北朝鮮国内の物価動向などからは、コロナ防疫のための防疫途絶などの影響により昨年秋ころから徐々に表面化していた消費物資不足などが、このところかなり深刻なものになりつつあるように思える。大会当時に前面に掲げていた「自力更生」のための構造改革だけを追求した場合には、体制不安を招きかねないとの懸念が生じているのかもしれない。