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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年12月10日 評論「3大革命赤旗獲得運動を拡大発展させる上で提起される重要な問題」

 

 標記評論は、「3大革命赤旗獲得運動を拡大発展させるため」の実務的課題について論じたものである。

 まず、「何よりも、幹部から3を市、郡、連合企業所を含むより広い範囲へと拡大することとした党の意図を深みを持って認識することが重要である」と主張している。すなわち、「市、郡、連合企業所を単位として大衆運動をより力強く繰り広げることが社会主義の全面的発展を加速化する上でいかに大きな意義を持つか」を理解し、「その実現のための闘争の先鋒に立つ」ことを求めている。

 次に、「市、郡、連合企業所が激動的な現実の要求に即して3大革命赤旗獲得運動の隊列に速やかに参加するようための目標を現実性がありながらも動員的に樹立する」ことである。ここでは、「周到精密でありながらも大胆に立てられた目標が大衆運動の成果を左右する」ことが強調されており、「赤旗」獲得に必要な諸目標の具体的設定に際して、実現可能かつ挑戦的な水準を見出すことを求めている。

 また、「この運動に対する指導を円満に担当遂行することができるよう職能(部署及びそのその権限の意)を正しく作成し、(当該部署)幹部の役割を最大限高めるための決定的な対策を取る」ことである。要するに、対象の拡大に即して、3大革命赤旗獲得運動指導部門を充実強化せよということであろう。そして、この中には、「3大革命赤旗獲得運動を担当した幹部を多方面的に準備された能力ある幹部によって充当すること」も含まれている。

 最後にあげた課題は、「道党委員会が舵取りをしっかり行う」ことである。そのために「各道に3大革命展示館を設け、道内の市、郡と連合企業所において3大革命を遂行する過程で収めた価値ある成果資料を展示し、参観活動をうまく行い幹部と勤労者を啓発」し、同展示館を「3大革命遂行に活力を吹き込む重要な学習、技術交流、情報交流の場として整備する」ことを求めている。

 評論は、こうした課題を通じて3大革命赤旗獲得運動を拡大発展させることによって、「社会主義の全面発展が力強く推進されることになるであろう」と結んでいる。

 以上のような主張からは、3大革命赤旗獲得運動の市、郡、連合企業所への拡大適用という方針が「社会主義の全面発展」路線のための具体策として打ち出されたことが改めて確認できると同時に、そのための具体的準備(目標設定、担当機関整備、人事措置)が当面の課題として提起されていることがうかがえる。また、各道に設けられる「3大革命展示館」は、同運動の目玉的な役割を果たすことになるのであろう。

 かねて疑問に思ってきたことは、この3大革命赤旗獲得運動の拡大発展方針にせよ「社会主義の全面発展」路線にせよであるが、それを現実に推進するにおいては、まさに同評論で示されたような全党的な組織的・実務的準備作業が必要であり、それらは、いうまでもなく「3大革命先駆者」のような人々がそれぞれの現場で頑張って対応できるような次元の課題ではないにもかかわらず、そうした重要な路線・方針がなぜ党中央委員会とか政治局といった機関の正式な会議の場ではなく、「3大革命先駆者大会」といった大衆集会の場で、しかも「書簡」を通じて突然明らかにされるのかということである。

 金正恩時代の政治運営の特徴として党会議の正常開催をはじめとした、いわば制度に基づく政策決定が指摘されているが(それは、そのとおりなのだが)、前述のような出来事は、そうは言っても、そこには、自ずと限界があり、まだまだ不透明な(あるいは恣意的な)政策決定の部分が少なからず残されていることを改めて認識させるものと考えられる。